頭蓋内外の痛覚感受部位は以下のものがあります。
いろんな分類があります。
次の様に考えると分かりやすいです。
一次性頭痛(機能性頭痛): 基礎疾患のないもの → 一般に心配のない頭痛
片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛、神経痛、心因性頭痛など
二次性頭痛(器質性頭痛): 原因疾患のあるもの → 一般に心配のある頭痛
脳外科的適応のある疾患(くも膜下出血、脳腫瘍、脳内出血)
内科的疾患(髄膜炎、感冒など)
耳、鼻、眼、歯科疾患によるもの
機能性頭痛の代表で、若い時に多く日常生活に支障が出るくらい痛みますが、時間がくると頭痛は止まります。痛い時は歩く振動も、うるさい音も、まぶしい光も、頭痛を悪化させますので、暗くして静かなところで寝込むような頭痛が特徴です。
片頭痛は頭の血管が拡張する為に、血管の周りの神経が刺激されて起こります。
頭痛を訴える患者さんの大部分は、自らを「頭痛もち」と思っています。この頭痛もちの頭痛の中にはいくつかの種類がありますが、最も多く、しかも悩まされるのが「片頭痛」です。
片頭痛は頭の片側からこめかみにかけて脈打つように「ずきずき」、「がんがん」と痛み、ひどい時には日常生活が妨げられるほどの強さの痛みや、吐き気を伴うとてもつらい頭痛です。
片頭痛は思春期頃から発症することが多く、成人の約8%が罹患しています。中でも女性に多く、患者さんの数は男性の約4倍といわれています。片頭痛は一生の病気であり、現在の医学では完全に治すことはできません。
血管説(セロトニン説)と三叉神経血管説がありますが、詳しくは分かっていません。こちらをご覧下さい。
片頭痛はその名の通り、片側の頭痛として現れることも少なくありませんが、痛みの現れる部位が左右変動する場合や、両側が痛むが左右で差がでる場合、両側が痛む場合など痛みの種類はさまざまです。
片頭痛は決まった片側のみに現れる頭痛ではなく、「偏った痛みがあらわれやすい」と理解していて下さい。片頭痛の特徴は以下のとおりです。
片頭痛では、小児や高齢者を除いてたいていの人が頭痛のあらわれる30分から数時間前に前ぶれを感じます。片頭痛は、前兆(目の前にチカチカと光が見えたり、星が見えたりする症状:閃輝暗点)のある片頭痛と、前兆はないがなんらかの前駆症状(頸すじ・肩の張り、生あくびなど)のある片頭痛、前兆も前駆症状もまったくない片頭痛と、大きく3つに分類されます。
片頭痛は検査ではわかりません。患者さんからの問診と医師がもっている医学知識を照らし合わせることによって初めて正確な診断ができます。
脳の検査として思い出すのがCTやMRIですが、これらは脳組織が破壊されるような病気については写しだすことができます。しかし、片頭痛は脳組織に異常を起こさないためこれらの検査では診断できないのです。片頭痛は脳ではなく血管が拡張することで痛みが起こるのです。
片頭痛の時には光が刺激となりますので、暗い部屋で静かにする方が望ましいでしょう。また頭を氷枕等で冷やすと拡張した血管が収縮するので、頭痛が軽くなります。
でも、片頭痛の治療法の中心は薬物療法です。現在までにわかっている範囲では薬物以外の治療法つまり、物理療法食事療法といった方法では、補助的効果は認められるものの、その効果は薬物療法を上回るものではありません。
片頭痛の薬物療法には大きく分けて二つの方法があります。一つは頭痛発作が出たときに対処する方法で、これを頭痛抑制治療といいます。これに対し頭痛を出にくくする治療法があり、これを頭痛予防治療といいます。
たいていの場合、頭痛抑制治療から開始し、症状が強かったり、頭痛の回数が多かったりした場合に、頭痛予防治療を追加します。
片頭痛の予防効果が認められている薬は、抗うつ薬、βアドレナリン遮断薬、バルプロ酸、カルシウム拮抗薬などがありますが、日本ではカルシウム拮抗薬の塩酸ロメリジンが保険適応となっています。
薬剤分類 | 長所 | 短所 |
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各種消炎鎮痛薬 | 軽症例では十分な効果が得られることが多い。 | 連用によって薬物性頭痛を招く可能性がある。 |
エルゴタミン製剤(カフェルゴットRなど) | 血管収縮作用によって動脈の拡張を抑制する。前兆や前駆症状のうちに服用すると、高い効果がある。 | 狭心症、妊婦には使用できない。 |
トリプタン系製剤(スマトリプタンRなど) | 頭痛発作があらわれたのちの投与でも頭痛の改善をもたらす。 | 血管収縮をきたすので高齢者への投与は避ける必要がある。 |
片頭痛には種々の誘発因子があります。これらの関与の程度はさまざまですが、ちょっとした注意で片頭痛の引き金となるものを避けることができます。具体的な注意事項は次のとおりです。
緊張型頭痛は頸部から頭部全体を取り巻く筋肉の緊張から起こる頭痛です。
中高年に多く、女性にも男性にもみられる頭痛で、程度としては軽度~中等度で、日常生活への影響は余りありません。頭全体を締めつけられるような持続的な頭痛です。帽子を被った感じとか鉢巻きをした感じです。片頭痛とは違い、体を動かすことによって悪くなることはなく、また、片頭痛でみられる吐き気、嘔吐、音や光に対する過敏性といった症状もありません。
この頭痛はいろんな事を気にしすぎるという性格が関係しています。
(この症状が主な訴えで受診される事が結構多いです。例えば歩くときにふらつくと言う訴えですね。私が意外と重視しているポイントです。)
問診が大事です。問診でだいたいの診断がつきます。初めて受診された方には器質的疾患がないことを確認するためにCTスキャンを撮る事もあります。
ここで、問診の説明を。
原因次第ですが、ストレスのもとがはっきりしている場合はそれを取り除くようにしなければなりません(と言っても無理な場合が多いですね)。またその方の性格が関係していますので、スッキリと治らない場合や、治ってもまた起こる場合もあります。大事な事は頭痛の原因を理解して貰うことです。
この頭痛は起こり始めると1~2ヶ月の間、毎日起こる(だから群発と言います、群発地震と同じ言葉の使い方)のが特徴です。20~30才の男性に多く起こります。一側の眼がえぐられるような激しい頭痛です。寝ているときに起こることが多く、痛みで目が覚めます。だいたい同じ時間に起こります。涙や鼻水が出たり、顔面が紅潮したり発汗したり、結膜が充血したりします。飲酒で誘発されやすいです。
片頭痛の予防の薬を毎日内服し、それでも起こるときはトリプタン製剤を飲みます。酸素吸入が効くこともあります。
頭に関する神経痛には、大後頭神経痛、小後頭神経痛、三叉神経痛などがあります。大後頭神経痛は意外と多いです。外来で神経痛ですねと言いますと、「えーっ、頭に神経痛ってあるんですか」と時々聞かれます。神経痛と言うと膝や足と思われている方が多いのです。大後頭神経は首から出て後頭部を通って前頭部まで伸びます。前頭部からは三叉神経の枝が伸びて来て吻合しています。
神経痛の特徴は過敏になった神経が刺激された時だけズキーッと痛みます。程度は強いのですが、しばらく我慢しているとおさまります。また時間をあけてズキーッと痛みます。頭を動かした時に起こります。たいていは肩や首のこりが強い時に起こります。ですから緊張型頭痛に併発することが多いのです。たまには首自体の病気や帯状疱疹から起こることもあります。
原因次第ですが、緊張型頭痛に伴う時はその治療を行います。帯状疱疹や首の病気で起きている時は、それぞれの治療を行います。原因がはっきりしない時もありますが、鎮痛剤で止まることが多いです。帯状疱疹では発疹が2~3日遅れて出ますので、痛み始めに受診された時は後で発疹が出るかも知れないと注意します。出たら皮膚科で治療を受けます。
二次性頭痛(器質性頭痛とも言います)の中で放っておくと命が危なくなるものと考えればいいでしょう。
脳外科的適応のある疾患ではくも膜下出血、脳腫瘍、脳内出血などがあります。特にくも膜下出血は突然発症し、意識がなくなるくらいの激しい頭痛です。嘔気も強く、そのまま意識が戻らない場合もあります。直ぐに治療の出来る脳神経外科の病院に救急車で行かなければ助かりません。現在でも半数の方が命を落とす病気です。脳内出血は小さいと頭痛のしないこともあります。脳腫瘍も同じ事です。それは最初に説明しましたが、脳自体には痛みを感じる受容器がないからです。
内科的疾患では髄膜炎(とくに細菌性髄膜炎)や脳炎は意識障害や精神症などの後遺症が残る事がありますし、重症の時は命を落としますので、危険な頭痛と言ってもいいでしょう。
緑内障も激しい頭痛がしますし、手遅れになると失明しますので、危険な頭痛に入ります。
これらの中で一番恐ろしい頭痛は、なんといってもくも膜下出血です。頭全体あるいは後頭部に金槌で突然なぐられたような強烈な頭痛が特徴です。意識を失ったり、痙攣を伴うこともあります。原因は、脳動脈瘤の破裂がほとんどです。脳神経外科ではまずCTで診断し、脳血管撮影により出血原因を確認します。動脈瘤があれば、クリップで止める手術(クリッピング)や血管内手術を行います。これをしないと、再破裂して死亡する危険性が高いのです。
頭痛がすると血圧が上がっているのではないかと心配される方が非常に多いです。でもその頭痛を問診すると、別の原因の事が多いのです。大半は緊張型頭痛です。緊張型頭痛の原因はストレスが一番です。ストレスのある時は血圧も上がるから、緊張型頭痛の起きるような状況では血圧も上がりやすいのです。
でも血圧が上がると頭痛がする事は分かっています。特に上が220以上、下が120以上では頭痛がすると言われています。後頭部が痛みます。特に急に血圧が上がると頭が割れるように痛くなりますが、ジワーッと上がって来た時は慣れてしまって余り頭痛はしません。脳出血を起こすまで自分の血圧が高いと知らなかった人が昔は結構おられました。
頭痛と血圧が関係しているかどうかを見極める方法は、血圧を下げてみる事です。血圧が下がっても頭痛のする方は頭痛の原因が他にあるという事です。
降圧剤や狭心症の薬によっては、血管拡張作用のために、頭痛の副作用が起こることもあります。
テニスや水泳などの激しい運動をした後に片頭痛が起こることがあります。これは運動の興奮により分泌されたアドレナリンが血管を拡張させる為に起こるものです。運動の前に血管収縮作用のあるエルゴタミンという薬をのむと防ぐことが出来ます。ただ、初めての場合はくも膜下出血などの事もありますので要注意。
血管性の頭痛(片頭痛や群発頭痛)にはお酒は悪いです。特に群発頭痛では発作が必発です。群発時期には避けましょう。片頭痛はお酒で誘発される傾向があります。
赤ワインが頭痛を起こしやすいことが知られています。お酒が片頭痛の誘因になると言っても飲む量や状況で大いに異なりますので、絶対に駄目という訳ではありません。上手くつきあって下さい。また蒸留酒は頭痛を起こしにくい傾向があります。
緊張型頭痛にはお酒は百薬の長です。でも飲み過ぎると駄目です。二日酔いになるほどにはお酒を飲まないで下さい。
片頭痛は温めると血管が開くので悪化します。冷やすとその逆で改善します。緊張型頭痛は温めると筋の血管が拡張し血流が良くなるので改善します。冷やすと悪くなります。ですから、頭痛はすべて冷やせば良くなるものではありません。
逆にお風呂に入って温まった時に頭痛が軽くなるかどうかを聞き、軽くなるなら緊張型頭痛、悪くなるなら片頭痛と考えることもできます。
治療としては片頭痛の時は頭の前の方を冷やします。緊張型頭痛の時は頭の後ろを温めます。よく首筋を冷やすと頭痛が楽になるという方がいますが、これは神経が麻痺するための見せかけの改善で、緊張型頭痛の時はなかなか治りません。
脳自体には痛覚を感じる感覚器がないので、脳実質から出来た腫瘍は痛みは少ないのです。しかし大きくなって周囲を圧迫したり、頭蓋内圧が上がった時は頭痛がするので、頭痛で見つかったときは脳腫瘍はかなり大きくなっています。
脳腫瘍と言っても脳実質でなく周辺の組織に出来た時は頭痛が早く出る事もあるし、水頭症を伴うような時は頭痛は早く起こります。
以上から、「脳腫瘍は頭痛が強い」と言う事は、半分本当で半分嘘と言う事です。
こう言う方は非常に多いです。でも脳梗塞を起こした方に聞いてみると頭痛は少ないのです。まれに首の動脈(椎骨動脈)の内膜が剥離して詰まる時は首が痛い事があります。梗塞が大きいときは頭蓋内圧が上がり頭痛がする事もありますが、この時は意識も悪くなることが多く頭痛の訴えは強くありません。多発性脳梗塞では頭がスッキリしないことがありますが、軽症の脳梗塞では頭痛はないと言っても良いです。すなわち、頭痛のするときに一番に脳梗塞を考える必要はありません。
片方が痛い頭痛を片頭痛と思っている人が多いですね。自ら片頭痛ですと言っても話を聞くと結構違っています。片頭痛でも両側に起こる事が多いのです。緊張型頭痛も結構片側に起きるし、これを片頭痛という人が多いのです。片頭痛は頭蓋内外の動脈から起こる痛みです。起こりやすい体質で起こりやすい状態の時に起こります。典型例では閃輝暗点があり15分から30分してズッキンズッキンとした痛みが始まります。こめかみや前頭部に多く、嘔気があり吐きやすい頭痛です。女性に多く、比較的若い人に多いので、昔から若い女性の頭痛の患者を診たら片頭痛を疑えと言われています。光がまぶしいので、部屋を暗くして静かに寝ておく方が楽な頭痛です。最近はよく効く薬があります。時に問診票に「変頭痛」と書いている人がいますが、片頭痛は変な頭痛という意味では決してありません。
慢性頭痛の中で圧倒的に多いのが緊張型頭痛です。原因は首や頭を取り巻く筋肉の緊張から起こる頭痛です。
最大の原因は精神的なストレスですが、姿勢や体型の問題で首自体に対する身体的なストレスで起こることもあります。
頭がボーっとして重い感じがして、ふらつくことも多いです。目の疲れが出やすく、眠りが悪くなります。
天気が下り坂の時に悪くなる傾向があります。 ストレスを単なる「イライラ」と思っている人が多いようで、
緊張型頭痛の説明のあとに自分にはストレスはないと言う人がおられますが、ちょっとした事でも気になることはストレスであり、些細なことでも起こります。
年輩の方は自分の病気の事が気になっている事が多いです。ストレスがないと言う人でも、話をよく聞くとストレスがあると言う事です。
緊張型頭痛の時には頭の周囲の筋肉が緊張して来るので重たく感じるだけで、頭が重くなることはありません(測った人はいないので、正確なデーターはありませんが)。ただ、頭を取り巻く筋肉が収縮するので、重たい感じがするだけです。
頭痛が長く続くと、脳の病気ではないかと心配になります。急に起こる病気にくも膜下出血や脳出血があるし、じわじわ痛む病気に脳腫瘍などがあります。これらでは、頭痛に吐き気を伴ったり、視力の異常や手足の麻痺や言語障害や平衡機能障害など、神経・精神に異常を伴う事が多いのです。脳腫瘍の様に頭蓋内圧が上がってからの頭痛は寝ていると頭痛がみられ、起きてしばらくすると楽になる事があります。とにかく脳の病気はCTスキャン(コンピューター脳断層写真)やMRI(磁気を使った脳断層写真)で、これらの病気は発見できるようになったので、おかしいときは病院へ。
慢性頭痛なら脳の病気を起こすことはありません。慢性頭痛と脳の病気は関係ないと言う事です。ただ慢性頭痛の人でも他の脳の病気を起こす事はあるので、頭痛の仕方がいつもと違う時は要注意です。いつもと違う頭痛がしたら直ぐに病院を受診しましょう。