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脳腫瘍

脳腫瘍とは、脳組織の中に異常細胞が増殖する病気です。

脳腫瘍には、脳組織自体から発生する原発性脳腫瘍と、他の臓器の癌が脳へ転移してきた転移性脳腫瘍の2種類があります。

原発性脳腫瘍には、良性と悪性の2種類があります。たとえ良性の腫瘍であっても、頭蓋内という限られたスペース内に発生する脳腫瘍は、大きくなると正常な脳を圧迫し障害をおこし、治療の対象になります。

脳腫瘍の年間発生率は人口10万人につき約10人と算定されており、どちらかといえば発生頻度の低い腫瘍です。成人に多く発生し、脳腫瘍全国集計調査報告では、小児期(15歳末満)の脳腫瘍は全脳腫瘍の13.1%を占めるにすぎません。しかし、小児腫瘍のなかでは、白血病(42%)に次いで第2位(24%)を占め、小児腫瘍の分野では多い方の腫瘍です。

脳腫瘍は頭蓋骨の内部に発生する腫瘍で、脳組織そのものから発生する腫瘍はもとよリ、脳組織の外側にある、たとえば脳を保護する膜(髄膜)から出る腫瘍(髄膜腫)などもふくみます。一般に、脳組織内に発生する腫瘍は悪性で、脳組織を破壊しつつ脳内を浸潤・進展し、脳機能低下(半身麻痺や言語障害など)をひきおこし、治療が無効な場合には呼吸中枢を冒して致命的となります。それに対して、脳組織の外側に発生する腫瘍、たとえば前記の髄膜腫や聴神経腫瘍は良性で、早期発見をして手術で全摘出が行えれば、再発もなく治癒が得られます。脳腫瘍全体では、悪性と良性の数はほぼ半々ですが、小児期では75%が悪性です。一般的に悪性脳腫瘍の治療は決してやさしくありません。その最も大きな理由は、脳という重要な場所に発生しているため、腫瘍が正常脳のなかに進んでいる部分(浸潤部)を広く切除できないことです。手術を行っても常に腫瘍が残っていると考えなければなりません。放射線治療は有効ですが、腫瘍周囲の正常脳への障害を考えると限度があります。 脳は重要な臓器なので、有害な物質が血液のなかから脳組織へしみ出してこないような自然の防壁(血液脳関門)があります。これによりわれわれの脳は保護されているわけですが、化学療法を行うときは、この防壁のため薬の脳への移行が不十分になるという欠点があります。 このような不利な条件が多いため、現時点での治療成績は満足できるものではありません。

脳腫瘍で最も多いのは、大人、子どもを問わず脳のグリア細胞由来のグリオーマ(神経膠腫)で、小児では髄芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫がつづきます。症状としては脳圧亢進(頭痛、嘔吐)、小脳失調(歩行障害)、脳神経麻痺(顔面神経麻痺、眼位異常)、視力障害、多飲多尿、などの健康児にはみられないものが多く、このような症状が数日以上つづいたときは、脳神経外科を受診したほうがよいでしょう。検査としては、CTスキャンやMRIの診断精度はきわめて高く信頼できます。

 

詳しくは下記のHPをご覧下さい(国立ガンセンターHP)。

頭を打って血が出たので安心したとか、頭を打って血が出なかったので心配したとか時々聞きますが、本当でしょうか?
以前から時々「頭を打って血が出たから安心した」とか「血が出なかったから心配した」とか耳にすることが確かにありました。しかし専門的に言えば全く意味のないことです。すなわち表面の出血と頭部外傷の重症度は関係の無いということです。大昔、戦(いくさ)などで頭を割られた時、出血していた人の方が血の出ていなかった人より助かったことが多いと言うことで、このようないわれが出来たのではないでしょうか。出血が頭蓋内のものであれば、それが外に出た分、脳に対する圧迫は減る訳です。現在でも救命の為に手術で頭の中の出血を取り出すことはあります。しかしこのことと「頭から血が出たから安心」と言うこととは関係のないことです。頭を打った際、頭の中に異常があれば、頭痛・吐き気等の頭蓋内圧亢進症状や麻痺やしびれなどの神経脱落症状が出ますので、出血が無くてもこれらの症状が有るときは急いで病院にご連絡下さい。
子供が頭を打った後、吐いてしまったのですが、すぐに病院に行った方が良いのでしょうか?
頭の中に何らかの異常(出血や脳挫傷)がありますと、頭痛・吐き気等の症状が現れますので、頭を打った後吐いた場合は一応頭蓋内の異常を疑います。しかし、実際に検査してみると問題の無い場合が圧倒的に多いのです。それは子供は大人に比べて嘔吐中枢が未熟で、吐きやすいからです。風邪などでも吐きやすいわけです。ですから、吐いた後でもいつもと同じくらい元気であれば、慌てて病院に行く必要はありません。しかし、いつもと違うと思ったらすぐに脳神経外科の病院に連絡された方がよいでしょう。
頭を打った場合、昔から血が出た方が良いと言われていますが、血が出ない時より軽傷でしょうか?
答えは出血の有無と重傷度は関係ないと言う事です。以前にまだ戦(いくさ)と言われる事が行われていた頃の話ですが、頭を打たれて意識がない人々をたくさん見て、頭から血を流している人の方に命が助かる事が多いと言うことが知られ、意識のないひどい人には頭に穴を開けてみたという記録があります。恐らく急性硬膜外血腫や急性硬膜下血腫でなかったかと思います。これらの外傷は今でも緊急手術で血腫除去術をする事があります。このようなことで、頭を打った時に血が出た方が良いという言い習わしが出来たのだろうと考えられます。しかし、頭部外傷の重傷度は表面の(外に見える)出血とは無関係です。先ほど述べた出血は表面に血が出ていないことがほとんどなのです。重傷度は脳の損傷がどれくらいあるかということで、意識の程度と相関が有ります。意識障害強い時は脳の障害も強いと言う事です。表面の出血は頭皮の傷から出ることがほとんどなので、頭の中の状態をあらわしているとは言えません。軽いのは意識もはっきりしていて傷もなく血も出ていない状態です。頭痛も吐き気もない時は一層軽い(心配ない)と言って良いでしょう。
慢性硬膜下血腫ってどんな病気ですか?

頭を打ってしばらくしてから、どうもおかしいと周りが気付いて病院に連れてくる、そしてCTスキャンで診断され手術になる、殆どの方はすぐに元気になって退院される、と言うのがこの病気です。頭を打った事を忘れている方もいるぐらい、軽度の頭部打撲でも起こります。何故か男性に多く、酒を飲む方に多いのです。お酒の多い方は頭を打つ機会が多いとか、脳萎縮が進んで血腫の出来やすい素質があるとか、いろいろ推測されますが、正確にはわかりません。女性にもないわけではありません。高齢の方には見られます。女性ホルモンの関与を疑う研究者もいるくらいです。

さて、ここで硬膜の勉強をして貰いましょう。右図の様に頭蓋骨の内側にあるのが硬膜です。脳と脊髄を包んでいます。硬膜の下にはくも膜があります。硬膜と、くも膜の間を硬膜下腔と言います。ここに出血するのが硬膜下血腫で一般的には急性と慢性に分かれます(亜急性硬膜下血腫と言う概念もありますが、一般的ではありません)。急性と慢性との違いは時間的なことだけでなく、出来方が全く違うものです。急性硬膜下血腫は激しい頭部外傷で脳表面から硬膜に入る静脈が切れたり、脳挫傷による脳自体からの出血がくも膜を破って流れ込んだもので、頭部外傷でも重症のことが多いです。一方慢性硬膜下血腫は最初に書きましたように自分では症状に気付かないこともあるくらい軽いものなのです。

慢性硬膜下血腫はどのようにして出来るのでしょうか。軽微な外傷でくも膜に穴があき、そこから脳脊髄液が硬膜下腔に出て来て貯まります。この時点で検査をした場合は硬膜下水腫と呼びます。この状態はしばらくすると消える事もあります。一方水腫が大きくなり、水腫を包み込む皮膜が出来て、そこから水腫自体に出血する事があります。これが慢性硬膜下血腫です。この時点で症状が出るのです。軽い頭痛や麻痺、言語障害が見られますが、僅かなことが多いです。高齢の方では痴呆症状が出ることがあります。ここまでには頭部外傷から1~3ヶ月時間がかかります。

治療についてお話しします。今述べました症状が出るまでは自然に治る場合もありますので、定期的にCTを撮り経過をみていきます。小さくなった時はそれで終わりですが、大きくなって症状が出た時は手術になります。全身麻酔が普通ですが、局所麻酔でも出来ます(少し痛いですが)。麻酔の後充分に消毒して4センチくらいの縦切開を血腫側の側頭部に入れます。骨に1センチくらいの穴を開けると、そこには硬膜が見えます。これに十字切開を入れると。血腫の外側の膜が見えます。これを切るとコーヒー色の水様の血腫が勢いよく吹き出します。新鮮な出血の時はドロドロした部分もあります。血液は血管から出ると固まりますが、慢性硬膜下血腫だけは水様です。だから小さい穴で吸引できるのです。血腫が出なくなったらチューブを慎重に血腫の中に入れて生理食塩水で洗います。そのチューブは翌日までそのままにしておき、術後に貯まった血液も取り除けるようにします。手術は皮膚を縫って終わりです。30分くらいで終わる手術です。

手術をすると術前にあった症状が速やかに良くなるのが普通です。痴呆症状で見つかった場合、痴呆症状が良くなりますので、周りの方がビックリされる事もあります。自覚的にも動きにくかった手足がすぐに動き出すなどの改善が見られ喜ばれます。手術で悪くなる場合もわずかありますが、一般的には脳外科の手術では簡単な手術の一つです。

 

 

顔面神経麻痺

顔面神経とは

顔面神経は、顔の筋肉(表情筋)を動かす神経です。感覚の神経ではありません。顔面神経は脳から出た後は聴神経と一緒に内耳道に入り、途中で聴神経と分かれて耳の後ろで表面に出ます。それから耳下腺の中を通り抜けて顔面に拡がります。そのため、内耳・中耳・耳下腺の病気でも顔面神経麻痺が起こることがあります(これを末梢性顔面神経麻痺といいます)。勿論脳の病気で顔が麻痺する事もあります(中枢性顔面神経麻痺といいます)。中枢性なのか末梢性なのか、麻痺の具合を見ればわかります。よく顔面神経麻痺の事を顔面神経痛と言われる方がおられますが、顔面神経麻痺は顔は痛くありませんので間違いです。顔面神経は運動神経で痛みを伝える神経ではありません。ただ、水疱瘡のウイルス(水痘帯状疱疹ウイルス)による麻痺の場合は耳(耳介)や口の中に帯状疱疹を伴うことがあり、それが痛い事はあります。

原因

顔面神経が走行するいずれの部位での障害でも顔面神経麻痺が起こります。慢性中耳炎、側頭部の外傷、耳下腺腫瘍などに顔面神経麻痺が伴うことがあります。また、水痘帯状疱疹ウイルスが原因となり、耳介や耳の穴に水疱を伴い顔面神経麻痺となる場合があります(ハント症候群)。しかし、多くの末梢性顔面神経麻痺の原因は不明であり、このような場合は「ベル麻痺」と呼ばれています。原因不明と言ってもウイルス感染が疑われる場合がしばしばあります。

症状

顔面神経麻痺が起こると、顔の筋肉が麻痺して顔が曲がった状態になります。眼を閉じることが困難になったり、水を飲むと口から漏れたりします。また、顔面神経には味覚を伝える神経、涙や唾液を分泌させる神経、大きな音から内耳を守るため鼓膜を緊張させる反射を起こす神経も含まれています。そのため、顔の麻痺とともに、味覚の障害、涙の分泌低下、音が響くなどの症状を伴うことがあります。また、前述のように水ぼうそうのウイルスによる麻痺の場合は耳や口の中に帯状疱疹を伴うことがあり、痛みを伴うこともあります。ハント症候群では耳鳴り・難聴・めまいを伴うことがあります。

いつ頃・どの程度治るのか

麻痺の程度によって、また原因・治療によって予後は大きく異なります。ここで述べるのはウイルスが原因あるいは原因不明の顔面神経麻痺の大まかな目安です。

麻痺の程度
麻痺が発症してから1週間程度は症状が進行することがありますので、麻痺の程度は1週間以上経たないと判定できません。原則として麻痺が重症なほど治るまで時間がかかり、治り方も不十分です。後遺症も重症なほど多くなりますが、リハビリである程度は予防できます。
重症の場合
顔の動きが正常の25%以下の状態ですが、外見的にもかなり麻痺が目立つ状態です。この場合は2~3ヶ月でよくなることもあれば、ある程度回復して症状が固定するまで6ヶ月前後かかることもあります。例外もありますが、けいれんなどの後遺症のない患者さんの大部分は安静にしていればそんなに目立たない程度ぐらいまでには回復します。
軽度~中等度の場合
顔の動きが正常の半分以上の場合が軽度(安静にしていればあまり目立たない)、25%~50%程度の場合が中等度になります。軽度の場合は1~2ヶ月以内、中等度の場合は2~3ヶ月程度で治ることが多く、後遺症の可能性もあまりありません。

検査

まず、顔面神経の走行のどこに障害があるかを調べます。 聴力検査、耳小骨筋反射、涙液分泌検査、味覚検査、レントゲン検査、脳神経検査を行います。場合によっては、MRI検査を行います。原因を調べるため、血清検査によりウイルス感染を調べます。また、顔の動きを観察し麻痺の程度を点数化し、麻痺改善の経過をみます。

治療

顔面神経麻痺の原因が明らかな場合は、その病気の治療を行います。

原因不明の場合(ベル麻痺)
薬物療法が中心となります。神経の浮腫による側頭骨内での圧迫を解除することを目的としてステロイド剤を投与することがアメリカ神経学会の治療ガイドラインにより勧められています。単純ヘルペスウイルス1型が発症に関与していることが疑われており、抗ウイルス剤を投与することも試みられています。麻痺が高度な(全く動かない)場合、完全治癒率は80~90%程度であり、6~12ヶ月経過しても麻痺が残ったり、まぶたと口が一緒に動く病的共同運動、痙攣(けいれん)やひきつれなどの後遺症を残すこともあります。
ハント症候群
抗ウイルス剤、ステロイド剤を点滴注射または内服します。抗ウイルス剤は発症早期にのみ効果がありますので、できるだけ早め(1週間以内)に治療を開始することが大切です。麻痺が軽度であれば1~2ヶ月で完全に治ります。麻痺が高度な(全く動かない)場合、完全治癒率は50~60%程度とベル麻痺に比べて不良であり、6~12ヶ月経過しても麻痺が残存し、まぶたと口が一緒に動く病的共同運動、痙攣やひきつれなどの後遺症を残すことも多くみられます。めまいは1~2週間で改善しますが、聴力の障害は完治しないこともあります。治療を始めてすぐに回復することもありますが、多くの場合では発症1ヶ月を過ぎた時期から改善しはじめます。一度障害された神経が障害された部位から徐々に再生してくるためです。よくならないからといって薬を中止したりすることは、その後の神経の再生のためにはよくありません。また、眼が閉じないためや涙液分泌障害のため、角膜が乾燥し角膜炎を起こすことがあります。点眼液を使用したり、睡眠時に眼を保護するようにテープや眼軟膏を使用します。
その他
麻酔科で行う星状神経節ブロックが神経の回復に有効の場合もあります。ブロックは毎日行います。いろんな治療で麻痺の改善がない場合、顔面神経管開放術などの手術療法を行うことがあります。

顔面けいれん

顔面けいれんは、片側顔面けいれんともいい、顔の半分が自分の意思とは関係なくけいれんするもので、ふつう目の周囲から始まりだんだん口元へと広がります。最初のうちの症状は疲れなどでまぶたのぴくぴくする症状(眼瞼けいれんといいます)との区別が困難です。徐々に進み、あごの下の筋肉も痙攣するようになります。頻度は、最初は緊張したときなど時々だけですが、徐々に痙攣している時間が長くなっていきます。

脳の深部で顔面神経に血管が接触して圧迫することが原因で起こります。あまり多い疾患ではありませんが、くわしい頻度はわかっていません。

病気自体は生命にかかわるものではないだけに、放置してもまったく差し支えないものです。しかし自分の意思とは関わりなく顔面が動く、ということで対人関係に苦労し、仕事上も他の人と会う仕事にさしさわる、ということもあります。また、片目をつぶってしまう、ということは実際上の不自由もあり、機械の操作が不自由である、あるいは運転のときに片目をつぶって事故をおこしそうになる、といったことで困る方もいます。したがって、ご本人が困っている場合には治療を考えるということになります。

1.診断

顔面痙攣の診断は、なれた医師が診察すればすぐにわかります。しかし、ときに症状が初期で眼の周囲だけにしか出ていないと、疲れ目との区別はつかないこともあります。また一日中症状が出ている場合でないと、一回の診察では症状がつかまえられないこともあります。

このような方の場合、2回くらい外来で顔を診察しているとはっきり症状が出ることがあります。症状が出やすい状態というのがあり、たとえば眼をぎゅーっとつぶってぱっと開くと、まぶたの下に痙攣が誘発されます。口元をいーと引き延ばすような顔をすると、まぶたの下に痙攣が出るのも、この病気の特徴です。非常にまれですが、神経への圧迫が血管ではなく、動脈瘤や脳腫瘍ということがあり確認する必要があります。

また手術治療を考える場合は、神経への圧迫がどの血管か、どのように圧迫しているかも検査の必要があります。これらの情報は、MRI検査でわかります。

2.顔面けいれんと区別しなければいけない病気

眼瞼けいれん

眼瞼けいれんは両側の目が強いまばたきをくりかえして閉じてしまうという症状をしめす病気です。名前からは目の病気のようですが、くちもとが引きつる、もごもごする、という症状も伴ってくることが多いのです。メイジュ症候群という別名もあります。よく顔面痙攣とまちがえて外来にいらっしゃいますが、顔面痙攣では両側に症状がおこることは非常にまれで0.5%以下です。顔面痙攣とちがって眼瞼けいれんの原因はまだよくわかっていません。

3.顔面けいれんの治療

1.手術療法
手術療法は神経減圧術(微小血管減圧術)と呼ばれます。脳の深部で神経に接触する血管を剥離して移動して、神経への接触をのぞきます。手術は全身麻酔でおこないます。痙攣している側の耳の後ろの方の皮膚を髪の毛の生え際にそって5-10cm切開します。皮膚と頭蓋骨の間の筋肉を剥離して頭蓋骨に穴をあけます。頭蓋骨の穴や筋肉や皮膚は、手術の終わり際にもとに戻してふさいできます。脳を包む硬膜という膜を切開し、小脳という部分と頭蓋骨との間の隙間から5-6cm奥に入っていくと、脳幹部から顔面神経が出ている部分になります。ここで神経を圧迫している血管を見つけて、神経に強くあたらないように移動して減圧します。硬膜はもと通りに縫合して、先に書いたように頭蓋骨、筋肉、皮膚を塞いで手術を終了します。
手術の成功率や危険性は医療機関で多少違いますので、それぞれの医療機関にお尋ねになる方がいいでしょう。
2.ボツリヌス毒素治療
ボツリヌス毒素は食中毒の毒素です。この毒素による食中毒では、からだの筋肉が麻痺をして呼吸ができずに命にかかわります。これを逆に利用したものがこのお薬です。ボツリヌス毒素を非常に希釈して、お薬にしてあります。これを顔の筋肉に注射すると、顔の筋肉が麻痺をして、痙攣がおこりにくくなります。根本治療ではありませんが、かなり症状が緩和される場合も多いのです。一回注射をすれば3-4ヶ月は症状が楽になります。入院が必要ない点が手術よりも利点です。
3.その他の治療法

緊張すると症状が強くなるので、精神安定剤を飲むと、緊張しにくくなり、多少痙攣が楽になる、という方もいます。てんかんの薬(抗けいれん薬)の処方が教科書にも出ていますが、あまり効果がない場合がほとんどです。しかし、まれに一時的に効果があった、という方がいないわけではありません。

また、以前にはブロック治療が行われました。これは耳の後ろで顔面神経が頭蓋骨を貫いて外にでてくる場所で薬液を神経に注入して、神経を破壊してしまう治療です。顔面神経麻痺はおこりますが、痙攣がおこらなくなるので、かつてはかなり広く行われました。1-2年で効果がうすれてきて、麻痺がある程度回復しますが、回復すると痙攣も再発します。繰り返すごとに顔の麻痺が徐々に悪化するのが難点でした。ボツリヌス毒素治療が出現して、この治療はあまり行われなくなりました。

三叉神経痛(特発性三叉神経痛)

1.三叉神経痛とは

三叉神経痛とは顔に痛みのでる病気です。顔の感覚(痛い、さわった、冷たい、熱いなど)を脳に伝える神経が三叉神経ですが、この三叉神経に痛みが起こり、顔を痛く感じるのが三叉神経痛です。

2.症状

三叉神経痛の顔の痛みにはかなり特徴があります。痛みは非常に強いものですが、突発的な痛みです。一瞬の走るような痛みで、数秒のものがほとんどで、ながく続いてもせいぜい数十秒です。5分10分と続くような痛み、じりじりとした痛みなどは三叉神経痛ではないことがほとんどです。三叉神経痛では痛みはいろいろな動作で誘発されます。洗顔、お化粧、ひげそりなどで顔に痛みが走ります。そしゃく(ものをかむ動作)に誘発されることもあります。つめたい水をのむと痛みが走ることもあります。痛みで歯磨きができないこともあります。触ると痛みを誘発されるポイントがあり、鼻の横などを触ると、顔面にぴっと痛みが走る、という場合は三叉神経痛の可能性が高いです。

三叉神経には三つの枝があって最初の枝がおでこ、2番目の枝が頬、3番目の枝が下あごにいっています。この枝の範囲に痛みがおこるのが特徴です。1本の枝にだけ痛みが出る場合と、2本以上にでる場合があります。

3.診断

三叉神経痛の診断には、痛みの症状や病気の経過の詳しい聞き取りがもっとも大切です。この病気の診療になれた医師がくわしく問診することによって、かなり病気の診断の見当がつきます。しかし痛みが典型的でない場合や、患者さんの症状の訴えがあまりはっきりしない場合、なかなか診断が簡単ではないこともあります。MRIの撮影は有用です。三叉神経痛の数%は、脳腫瘍が原因で起こっていることがあり、そうではないかの確認が重要ですし、また神経が血管で圧迫されている様子が直接確認できることもあるからです。

4.区別しなくてはいけない病気

三叉神経痛(特発性三叉神経痛)と区別しなくてはいけない病気に、帯状疱疹後三叉神経痛があります。帯状疱疹はウイルスがおこす皮膚の病気です。水ぼうそうのウイルスの親戚ですので、皮膚の症状は水ぼうそうのような小さな水ぶくれがいくつもできた後、かさぶたになるのが特徴です。帯状疱疹のウイルスは神経にひそんで、神経に沿ってあばれるのが特徴で、顔では三叉神経の分布に一致した皮膚の症状(皮疹)が出ます。過去に顔に帯状疱疹がおこったことがあると、あとあと特発性三叉神経痛と同じような痛みが出てくることがあります。痛みの性質だけでは区別がつきません。帯状疱疹が顔に出たことがなかったかよく問診することが区別の手がかりです。

このほかに、顔の痛みは、副鼻腔炎、特殊な脳梗塞、たくさんの歯を抜いた後などいろいろな理由でおこります。帯状疱疹後三叉神経痛以外は、よくお話を聞くと痛みの性質が三叉神経痛とは違っています。

耳の前には顎関節という顎の骨と頭蓋骨のくっつく部分があり、関節になっています。ものをかむときに顎をうごかしたりするとこの関節に痛みがでる場合があり、また顎をうごかさなくても痛むこともあり時に三叉神経痛と間違えられます。口腔外科などでレントゲンや触診、問診をすることによって区別ができます。

群発頭痛は眼の周りや奥のはげしい痛みを起こします。痛みの性質としては、激痛で、眼をえぐられるような痛みが起こります。三叉神経痛とおなじく非常にはげしい痛みですが、三叉神経痛よりも長い痛みです。また痛みにともなって痛みと同じ側の眼から涙が流れたり、鼻水が出たりするのも特徴です。お酒を飲むと痛みが誘発される場合があります。しばらく痛みのおこりやすい時期がつづくと半年くらい痛みのない時期がつづくという特徴があり、この点は三叉神経痛に似ています。

舌咽神経痛は三叉神経痛と同様の痛みがのどの奥に起こります。ものを飲み込んだときに痛みがひきおこされます。耳の穴の奥の方、くびの前面にいたみが走るように感じる場合があります。非常にまれなものですが、三叉神経痛と区別しておく必要があります。

5.治療

① 内服治療

三叉神経痛は内服薬がよく効く病気の一つです。カルバマゼピン(商品名、テグレトール®)というお薬で、8割以上の人で一時的には痛みが消失あるいは相当改善します。

これはてんかんのお薬ですが、神経の伝達を押さえる、ということで痛みの情報が神経に走るのを押さえて、痛みを軽くします。バクロフェンというお薬もかなり有効です。

このほかにバルプロ酸ナトリウム、フェニトインというお薬も時に有効です。バルプロ酸ナトリウムとフェニトインも、てんかんのお薬です。

しかしカルバマゼピン以外は、効果には個人差があります。お薬の治療では、時に副作用が問題になります。ふらつきや眠気などの副作用がときにでます。

ふらつきや眠気は多くの場合、4-5日内服していると体がなれて楽になってきますが、どうしてもつらい時は主治医の先生とよく相談して、お薬の量や飲み方を工夫する必要があります。

またお薬の副作用で、肝臓の機能がわるくなることがまれにありますので、血液検査をときどきする必要があります。

皮膚に発疹が出た場合も、お薬による薬疹のことがありますので、すぐに主治医の先生に相談する必要があります。

② 手術療法

飲み薬を飲んでいても、どうにも痛みが楽にならないという場合、手術を考えることになります。またMRIで脳腫瘍が見つかったときも、手術を考えることになります。

手術の実際
痛みのでているのと同じ側の耳のうしろの方の皮膚を髪の毛の生え際にそって5-10cm切開します。皮膚と頭蓋骨の間の筋肉を剥離して頭蓋骨に穴をあけます。頭蓋骨の穴や筋肉や皮膚は、手術の終わり際にもとに戻してふさいできます。脳を包む硬膜という膜を切開し、小脳という部分と頭蓋骨との間の隙間から5-6cm奥にはいっていくと、脳幹部から三叉神経が出ている部分になります。ここで神経を圧迫している血管を見つけて、神経につよくあたらないように移動して減圧します。硬膜はもと通りに縫合して、頭蓋骨、筋肉、皮膚を塞いで手術を終了します。脳腫瘍がある場合は、もちろん腫瘍を摘出して、腫瘍の神経への圧迫を取り除きます。
手術の成功率

外国からの論文の報告では、5-6年程度の経過を見た結果、7割から9割の患者さんで痛みが改善/消失したという成績が多いようです。国内では熟練した術者の場合、90%以上の痛みの消失率を報告している場合もあります。

手術の危険性、合併症

手術は全身麻酔の脳幹部の手術になるため、一定の危険を伴います。全身麻酔自体やはりわずかですが生命の危険性がありますし、脳幹部というのは呼吸や循環の中枢でもあり、いってみれば生命の中枢ですので、ここでの手術操作という意味でもやはり生命の危険があり得ます。

この他、三叉神経の付近にある聴神経が障害されると、手術側の耳が聞こえなくなることがありますが、これは熟練した術者でも1%程度おこるといわれています。さらに、三叉神経の周囲には眼球を動かす神経があり、これが障害される可能性があります。まれですが、この場合、ものがだぶって二重に見えてしまうということ(複視)が起こります。

③ 定位放射線治療

定位放射線治療は、脳の外の多くの方向から放射線を照射して脳の深部の一点に強い放射線をあてる治療です。ガンマナイフ、サイバーナイフなどがこれに相当します。三叉神経痛の患者さんの三叉神経に強い放射線をあてると痛みが軽くなる場合があることがわかっています。なぜ痛みがよくなるのか、詳しくはわかっていません。6-8割の患者さんに有効であると言われていますが、長期的にはもう少し効果が落ちるようです。また、痛みが完全に消失する方もいますが、良くなっても多少は内服薬の併用が必要な方もいます。照射後すぐに痛みがとれず、数ヶ月かかって症状が改善する方もいます。
手術が根本的治療であるのに対して、対症療法であり、また効果も手術よりは多少劣りますが、全身麻酔がいらない点が利点であり、全身状態の悪い方や高齢者の方にも治療が可能です。

④ ブロック(三叉神経ブロック)

三叉神経に感覚が伝わるのを防いで痛みの伝わりを減らそうという方法です。神経に直接局所麻酔薬や神経破壊薬を注射して痛みをとります。局所麻酔薬では麻酔がきれれば痛みが再発します。神経破壊薬では効果は長持ちし、1-2年の間痛みが楽になります。しかし、この間、顔にしびれたような感覚がのこることになります。神経破壊薬のかわりに高周波の電流で神経を焼く治療があります。これもブロックと同様に痛みはかなり楽になりますが、やはりしびれ感がおこります。神経破壊薬によるブロックと同様、1-2年たってしびれがよくなってきたころ痛みがまた出てくることが多いです。

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