熊本市の脳神経外科/内科/リハビリテーション/頭痛

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そのだ脳神経外科医院

〒862-0946
熊本県熊本市画図町所島135-1
TEL:096-379-3888
FAX:096-379-6001

脳卒中

脳卒中について

脳卒中は、脳の血管の異常で急に起こる病気の総称で、脳血管障害とも言われます。血管が切れる場合(脳出血やくも膜下出血など)と、血管がつまる場合(脳梗塞)に分けられます。
脳卒中は、以前は日本人の死亡原因の第1位だったことがありましたが、現在では、1位が「癌」、2位が「心臓病」で、脳卒中は第3位です。脳卒中の死亡が減少した理由は、皆さんの高血圧に対する認識が高くなり高血圧症を治療する方が多くなったからです。また、患者数はがん患者よりも多く、約150万人といわれています。年間では、新たに約35万人の人が脳卒中になっていて、年間死亡者数は約 13万人と言われています。

主要死因別死亡率(人口10万人対)の長期推移

また、脳卒中の中でも患者数がいちばん多いのが脳梗塞で、脳卒中全体の約75%を占めているとされています。次いで脳出血が約15〜20%、くも膜下出血が約5〜10%です。ここでは脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を解説します。後に脳卒中に関して皆さんから受けた質問に対するQ&Aを載せています。参考にしてください。

脳卒中について

脳卒中のQ&A

脳血栓症と脳梗塞は同じ事ですか?また脳卒中とはどう違うのですか?

脳の動脈が詰まる病気が脳梗塞です。脳梗塞は、動脈硬化で脳の動脈が徐々に細くなって詰まる場合(脳血栓症と言います)と、心臓や頸動脈に血液の固まりが出来てこれが脳に流れて詰まる場合(脳塞栓症と言います)に分けられます。明らかに心臓の病気がある場合や若い人に起こった場合は脳塞栓症の診断はつけやすいのですが、老齢の方に起こった場合は脳血栓症と脳塞栓症の区別がつけられないこともありますのでひっくるめて脳梗塞と言う方が間違いはありません。脳血栓症も詰まった血管の大きさでいくつかのタイプに分けられます。
 さて、脳卒中は突然起こる脳の血管の病気のことで、以前は中風とか中気と言っていました。血管が切れる場合(脳出血やくも膜下出血など)と血管が詰まる場合(脳梗塞)に分けられます。すなわち脳卒中が一番全体を示しており、その中に脳梗塞や脳出血があり、脳梗塞の中に脳血栓症や脳塞栓があると考えて下さい。お分かりになりましたか。

    

脳卒中は脳の血管が切れる病気で以前に脳溢血と言った。これは本当ですか、間違いですか?

答えは間違いです。脳卒中は以前中風とか中気とか言いました。「卒」は急にと言う意味で、「中」は当たると言う意味です。要するに急に脳の病気に当たるといことで、突然起こる脳の血管の病気の総称です。脳卒中には切れる場合(出血)と詰まる場合(梗塞)があります。出血にも脳出血やくも膜下出血など動脈の切れ方で違う種類の出血の仕方があります。脳溢血と言うのは高血圧が原因で脳の中の小さい動脈が切れるもので、脳の中に出血するので脳の損傷が強く、また手足を動かす神経の通り道のそばに出血しやすいのでマヒを来しやすいです。現在は高血圧性脳内出血とか高血圧性脳出血と言います。以前は高血圧が多くて脳溢血も多かったのですが、最近は血圧の薬が発達し血圧の高い人が少なくなりましたので、脳溢血は少なくなりました。昔は脳溢血=中風と言う感じがありましたが、今は脳梗塞が圧倒的に多いのです。

脳梗塞の既往が有りますが、また起きないか心配です。脳梗塞の前ぶれはありますか?

脳梗塞は脳の血管(主に動脈)が詰まり、血液が流れなくなった部分の脳が壊死を起こし、麻痺や言語障害の起こる病気です。この病気は遺伝的要素がありますので、親が脳梗塞の場合、その子が脳梗塞になる確率はそうでない場合に比べて高くなります。さらに年令と伴にその発生は多くなります。この遺伝的要素と年令はどうしようもない危険因子ですが、今から述べる要素は努力次第では良くすることが出来ますので、脳梗塞を起こしやすい家系の人や、一度起こした人はその治療に務めなければなりません。それには高血圧、高脂血症、糖尿病、不整脈、肥満、喫煙(タバコ)等があります。ですから、脳梗塞が起きないか心配な方は、この危険因子の改善に努めなければなりません。又一度脳梗塞を起こした方は、脳血管の状態を検査で調べ、それにふさわしい予防薬を飲んで貰っていますので、一生が治療という気持ちで内服治療を続けて下さい。さて、脳梗塞の前ぶれがあるかという質問ですが、教科書には「ある」と書いてあります。(ただし、私はそれ自体がもう軽い脳梗塞と考えていますので、前ぶれは「ない」ということになりますが。)一般に前ぶれと言われるものには、一過性脳虚血発作といい、一時的に片麻痺や失語症などの脳局所症状が現れるもので、厳密には24時間以内に元に戻るものがあります。他には「黒内障」といい、一時的に目の前が真っ暗になることで、後頭葉の一時的な血流障害で起こります。ですから軽いが一時的に手足がしびれたり、動かなくなったり、言葉が出なかったりした時は、脳梗塞の前ぶれと考えてすぐに病院を受診した方が良いでしょう。

 

脳の検査を受けた時に、小さな脳梗塞があると言われました。年齢的と言われましたが心配です。

頭を打って来院され、検査したCTスキャンなどで脳梗塞(脳の動脈が詰まる病気のことです)を見つけることがあります。ご質問もこのようなことかと思いますが、特にMRIという機械では一層見つかりやすくなります。最近脳ドック(人間ドックのように定期的に脳の病気を検査するシステム)のデーターをみますと、脳梗塞がかなりの率で発見され、年齢とともに多くなる事が分かってきました(平均で約三分の一に、高齢者では約半分に)。つまり小さな脳梗塞は老化現象の一つとも考えられるのです。私はCTスキャンの説明の時によく脳にも顔と同じように老化現象が起こると言います。つまりしわが目立ってきたり、シミが出てきたり、あるいは脳が縮んできたりすることです。このような変化の一つに小さい脳梗塞があるわけですが、老化現象は少なくて済めばそれにこしたことはありません。同級生が集まっても若く見える人や、逆に老けて見える人がいるわけで、老化現象には個人差があります。脳にも同じ事が言えます。
さて、何かの際に検査をし、突然「脳梗塞がありますね。」と言われた時にはびっくりされたでしょう。偶然脳梗塞が見つかった場合、無症候性脳梗塞と言います。無症候と言っても全く症状がない訳ではありません。よく聞きますと、頭が重い、手がしびれる、めまいがするというような自覚症状のある方が結構見られます。多少抑うつ的になるという人も多いと報告されています。しかしこれらの症状はいろんな病気でもみられるわけで、脳の病気と自覚されないことが多いのです。
さあ、問題は偶然に見つかったからと言って、また症状も大したことはないからと言って、そのままにしていて良いかと言う問題です。偶然に見つかっても脳梗塞は脳梗塞ですので、そのままにしておくことは望ましくありません。先ほど老化現象には個人差があると言いましたが、医学的に言えばそれなりに原因があるのです。脳の場合、血液の流れを悪くする病気、例えば高血圧・糖尿病・高脂血症・脱水・心臓の病気などがある方に多いわけです。ですからこれらの病気の有無を調べる必要があります。病気が見つかればその治療が必要です。中には脳血管撮影で血管にかなりの異常が見つかり、手術が必要な場合や脳梗塞の治療(血液が固まりにくくなる薬を服用)を必要とする場合もあります。ですから、偶然とは言え脳梗塞が見つかった時は、専門の医療機関に紹介して貰う方が良いでしょう。良かったら当院へお出で下さい。とにかく、偶然に見つかった事で将来に起こるであろう脳梗塞の発作を予防することが出来ると考えればラッキーであったとも言えます。

頭痛で、ある病院を受診したところ、CTで脳梗塞があると言われ、薬を貰いました。脳梗塞とはどんな病気ですか? どうすればいいですか?

脳梗塞の程度(大きさ)と詰まった血管の部位にもよりますが、よく見る脳梗塞では原則的には頭痛はありません。大きい脳梗塞で脳圧が上がった時や、血管が剥離する時には頭痛がする事もありますが、このような時は他の神経症状(麻痺とかしびれとか)が出ることが多いのです。慢性の頭痛(頭重感)であれば知らない間に起きた脳梗塞の場合もあります。どんな頭痛であったのか、もう少し話して貰えると、脳梗塞と関係のある頭痛であったのかどうかが分かるのですが。
さて、質問の場合、神経症状は無いようですので、まず脳梗塞に関係のない頭痛でしょう。たまたま検査したら脳梗塞が見つかったのでは無いでしょうか(こういう場合を無症候性脳梗塞と言います)。脳梗塞は脳の血管、主に動脈が詰まる病気です。脳梗塞は脳の血管に狭いところが出来てそこが詰まってしまう脳血栓症と、心臓や頸動脈に血栓が出来、それが脳まで流れていって詰まる脳塞栓症に大きく分けられます。前者は年齢と共に多くなりますが、後者は心臓の病気があれば若い方でも起こります。脳血栓症は年齢以外に起こしやすい体質(例えば高血圧や糖尿病など)がありますので、それを調べその治療が必要になります。さらに脳の動脈や頸動脈を調べて狭いところがないか調べる必要があります。狭いところは広げる手術をすることもあります。治療は急性期の場合入院の上血栓を溶かすようないろんな注射を打ちますが、それでも麻痺などが残ったり、ひどくなった場合はリハビリテーションが必要になります。この質問の方の場合、無症状の様ですので、脳梗塞を起こしやすい体質がどれくらいあるかを調べ、あれば治療が必要になります。血管の検査も必要です。また再発を防ぐために血液を固まらなくする薬を飲む場合もあります。貰われた薬は恐らくこれでしょう。ご心配なら薬を持参の上、受診して下さい。

脳梗塞の症状は何時頃まで良くなるのでしょうか?

脳梗塞の症状によっても少し違います。言語障害は治るのに時間がかかります。手足の麻痺は少し早いのですが、利き手ですと箸を持ったり、字を書いたりなど小さい動作をしなければなりませんので、時間がかかります。足の方は歩くだけなら、体を支える力が出れば良いので、ある程度早いです。ただし、脳梗塞の程度により(要するに麻痺などの程度により)、回復までの時間は違いますし、治りきらないこともあります。このように重症の時は、日常生活が少しでも楽になれるような気持ちに切り替えてリハビリに励まなければなりません。さて、ご質問の回復までの時期のことですが、1年くらいまでは回復すると考えて良いでしょう。ただ一ヶ月位を過ぎるとそのスピードは遅くなります。身障者の手続きは発症から半年で出来ます。

つい最近のことですが、会社の同僚が突然死にました。くも膜下出血だったそうです。自分も心配です。どうしたら良いでしょうか?
42歳男性

くも膜下出血はたいていの場合、脳の大きな動脈に瘤(脳動脈瘤と言います)が出来て、それが破裂した時に起こります(まれには脳動静脈奇形などの血管の病気で起こることもあります)。動脈が切れるのですから、出血は勢いよく、止まらなければアットいう間に頭の中が血液だらけになってしまいます。このような場合はアットいう間に意識がなくなり、呼吸障害が出現し、処置が悪ければそのままなくなることもある訳です。会社の同僚の方はこういう状態ではなかったかと思います。比較的出血が軽い場合は、意識ははっきりしていて、頭が痛くてむかむかするくらいのこともあります。頭痛は軽くても突然始まるのが特徴です。くも膜下出血は二度三度と出血を繰り返しますので、一度目の出血が軽くても安心できません。出血を繰り返すにつれて死亡する確率が増え、助かっても多くの後遺症がでる心配があります。くも膜下出血を起こした場合、早急に先ほど述べた脳動脈瘤を検査(脳血管撮影)で見付けて、それを手術で処置し破裂しないようにしなければなりません。ただ出血がひどいと病院に来るまでに亡くなったり、病院に着いても間に合わなかったり、あるいは手術が出来ないこともあります。二回目の出血が起こるまでに手術がうまくいけば、再出血の心配はなくなりますが、初回の出血で脳に何らかの損傷があれば障害が残ることもあります。また三週間くらいまでは脳血管が縮んで来て脳梗塞になることもあります。このようにくも膜下出血は急に起こる恐ろしい病気ですが、治療がすべてうまくいけばもとの状態に戻れる病気でもあります。
さて、質問に戻りますが、出血を起こす前にくも膜下出血の診断は出来ません。しかし出血源の脳動脈瘤があれば出血する可能性はあります。逆に言うと脳動脈瘤がなければ、くも膜下出血はおこらないのです。ですから検査で脳動脈瘤を見付けることが、くも膜下出血を防ぐ事につながります。その検査は脳血管撮影と言い、ある程度危険性のある検査でした。くも膜下出血を起こした場合は手術の前に必ず行いますが、くも膜下出血を起こしていない場合には、危険性の為にその検査をすることは勧められませんでした。よって、くも膜出血を起こすかどうかは「神のみぞ知る」状態でした。しかし検査技術の進歩で、最近では安全に検査が行えるようになり、多くの人に脳動脈瘤があるかどうかを調べる方法が広がってきました。これが脳ドックです。現在済生会病院や赤十字病院、熊本整形外科病院などで行われています。ですから、質問の方のようにくも膜下出血が心配なら、脳ドックを受けられる事をお勧めします。兄弟や親にくも膜下出血があった方は特にお勧めします。尚、二月の勉強会で済生会熊本病院脳神経外科部長藤岡正導先生から脳ドックの話を聞くことになっています。是非ご参加下さい。

くも膜下出血は低血圧の人には起こらないって本当ですか?

そんなことはありません。2月の勉強会で藤岡先生も話しましたが、くも膜下出血は頭の中の大きな動脈に瘤(動脈瘤と言います)ができ、それが破裂して出血します。この動脈瘤は先天的に持っているわけで、血圧の低い人にも起こります。脳ドックはこの動脈瘤を早期に見つけ手術することで、くも膜下出血になることを防ぐのが目的です。一卵性双生児では脳動脈瘤の同時発生率がかなり高いのです。くも膜下出血を起こしますと現在でも約三分の一の方がなくなる怖い病気です。ですから家族の中にくも膜下出血を起こした方がいる方は脳ドックを受けられることをお勧めします。

一過性脳虚血発作ってどんな病気ですか?

■どんな病気?

脳の細小動脈が一過性に詰まったり、細くなって血液の流れが減少して起きる脳卒中の一種で、半身の麻痺やしびれ、軽い言語障害などを起こしますが、たいてい数分から数時間で感覚が戻り症状は消失します。症状が数分から数時間で治まるのは、その間に血栓が溶けて流れたり、減少した血流が回復して血管の狭窄部分の先に血液が流れるようになるためです。一過性脳虚血発作は、すぐに治まるため軽くみてしまいがちですが、一度でも血栓ができて血流が途絶えると、再度同じことが起こりやすくなります。数年以内に20〜30%の確率で脳梗塞を発症するともいわれているので、適切な対処をすることが大事です。とくに高血圧を併発しているときには、細い血管の動脈硬化による血管狭窄が進んで、より血管が詰まりやすくなっているため、要注意です。

■どうしてなるの?

一過性脳虚血の主な原因には大きく分けて2つあります。ひとつは高血圧や糖尿病のために、細い動脈の動脈硬化が進んで血管が狭くなっている時に、低血圧や心臓障害などが起きて血液の流れが弱くなり、その先の血液が滞ってしまうため起こります。もうひとつは心臓病の人は心臓の血管に血栓ができやすく、その小さな血栓が脳の血管を塞いで血液の流れを減少させるため起きます。

■早期治療が大事

症状がその後良くなるのか悪くなるのか、病気の初めには分かりません。とにかく早く病院に行くことをお勧めします。特に症状が改善した時も大丈夫と思わずに病院に行く事が大事です。症状が24時間以内消失すれば一過性脳虚血発作、消失しなければ脳梗塞です。だから一過性脳虚血発作は脳梗塞と同じなのです。たまたま症状が軽かっただけです。病院ではまず神経学的診察でどんな症状があるのかを診ます。そしてCTやMRIで症状を説明しうる所見が出ていないか、また脳の血管の状態も調べます。さらに血液検査や心電図などで脳梗塞を起こしやすい体質になっていないかをチェックします。異常があればその治療が必要です。

■生活習慣改善アドバイス

先ほどの検査で異常があればそれぞれの食事療法が必要です。

  1. ① 塩分を控えめにする
  2. ② ナトリウムの排泄を促すカリウムを多く含む食品(りんご、枝豆、バナナ、カボチャなど)を積極的に摂る
  3. ③ 血圧を下げる作用があるといわれるカルシウムを豊富に含む食品 (乳製品など)、マグネシウムを豊富に含んだ食品(焼きのり、 昆布、ごまなど)を食べる
  4. ④ 動物性脂肪やコレステロールを多く含む食品を控えめにする
  5. ⑤ アジやサバ、イワシなど青背の魚に多く含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)、DHA(ドコサヘキサエン酸)などの不飽和脂肪酸を積極的に食べる
  6. ⑥ 適度な運動や日常で積極的にからだを動かす
  7. ⑦ 太り過ぎに注意する
  8. ⑧ 充分な睡眠と休養でストレスを解消する
  9. ⑨ 禁煙する
  10. ⑩ お酒は飲み過ぎない(日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本、ウイスキーならダブル一杯)

未破裂脳動脈瘤が見つかりました。手術するかどうか悩んでいます。

最近の大規模な調査の結果では(2002年のアメリカ脳神経外科学会総会で報告)年間破裂率が従来から言われていた値よりもかなり低かったため、手術した方がいいのかどうか論争になっています。

従来、未破裂脳動脈瘤の年間破裂確率は、1〜2%と言われてきました。これに対し、今回の調査結果では、くも膜下出血を以前に起こしたことのない人では、直径6mm以下の動脈瘤の場合、年間破裂率は0.1%、7mmから9mmの場合は0.7%、くも膜下出血を以前に起こしたことのある患者では、直径10mm以下の場合0.5%、という結果になっています。従って、くも膜下出血を起こしたことのない患者で直径が6mm以下の場合は、従来いわれていた出血率よりもかなり低い可能性があります。

どんな手術でもそうですが、100%安全ということはありえず、この手術も若干の危険性を伴います。脳動脈瘤の手術の危険性は、多くの報告例をまとめた結果によれば、死亡率が、1〜4%、何らかの後遺症を残す率が、4〜10%程度といわれています。この危険性は、動脈瘤の場所や大きさによっても異なりますし、もちろん、術者の熟練度にも大きく関係します。

もう一つ考えるべきことは、患者さんの年令です。簡単にいえば、動脈瘤を持っていても、死ぬまでの間に破裂さえしなければ、問題はないわけです。患者さんの年令が上がるにつれて、余命は減少しますから、死ぬまでの間に動脈瘤が破れる確率は少なくなります。従って、未破裂脳動脈瘤の手術を考える場合は、患者さんの年令が大きな要素になります。また、動脈瘤手術の合併症も、年齢が高くなるほど、危険性が増してきますから、その意味でも、年齢は重要な要素です。

あなたの場合、未破裂脳動脈瘤の大きさや部位、年令など分かりませんので、的確なアドバイスが出来ません。記載の資料で判断してください。本当に悩む問題です。

脳梗塞

脳梗塞

脳梗塞は脳の動脈がつまり、血液が流れなくなった部分が壊死(死んでしまうこと)を起こす病気です。脳梗塞はその起こり方により大きく二つに分けられます。その一つは動脈硬化が原因で脳の動脈が徐々に細くなって詰まる場合で、脳血栓症と言います。もう一つは心臓や頸動脈に血液の固まり(血栓と言います)が出来てこれが脳に流れて行き詰まる場合で、脳塞栓症と言います。明らかに心臓に病気がある方や若い人に起こった場合は脳塞栓症の診断はつけやすいのですが、老齢の方に起こった場合は脳血栓症と脳塞栓症の区別がつけられないこともあります。脳血栓症は詰まった血管の大きさでいくつかのタイプに分けられます。最近目立って多くなったのはラクナと言われる小さい脳梗塞です。

脳梗塞の症状はどこの血管がつまったかによって少し違いますが、典型的には手足の麻痺、手足の感覚障害、言語障害、めまい、嚥下障害などです。大きい血管がつまると、意識障害が起こり、ひどい時は死に至ります。よく「脳の血管が詰まった様に頭が痛い」と言われる方がおられますが、脳梗塞特に小さい脳梗塞では頭痛はしません。脳塞栓症は脳出血と同様急に起こりますが、脳血栓症の場合は少しずつ悪くなって行く事もあります。とにかく先ほどの症状が出たら、すぐに処置できる病院に行き、早く治療を開始する事が必要です。
治療については急性期と慢性期に分けられます。まずは入院が必要で、安静にしなければなりません。急性期ではとにかく正確な診断をつける事が大事です。それは脳血栓症と脳塞栓症では治療がかなり違うからです。の出来る病院に入院となります。

2005年に発売されたTPAと言う薬(注射)は血のかたまり(血栓)を溶かす強い作用があります。TPAを静脈内に注射して、脳動脈を閉塞している血栓を溶解し、血流を回復する治療が血栓溶解療法です。効果は良いのですが、その使用法を間違うと大きな副作用が出ます。血液が溶けすぎて出血を起こしやすくなるからです。それを防ぐ為にはまず発症から3時間以内に治療を開始しなければなりません。
それ以外に脳血栓症では血液の流れが良くなる薬や、脳を虚血(血液が足りない状態)から保護するような薬を点滴し、今ある症状を軽くしたり進行することを防ぐよう努めます。そして病状が安定したら、体を慣らしていき麻痺があればリハビリテーションを開始します。これらの治療で症状が消失すれば、急性期の治療の2週間が過ぎれば退院出来ますが、症状が残った場合でリハビリテーションが必要な時は、リハビリテーションに励まなければなりません(リハビリテーション専門の病院に入院する場合が多いです)。脳塞栓症ではその原因の心臓の検査や治療がさらに加わります。慢性期には再発防止が中心で、脳梗塞の危険因子(脳梗塞になりやすい体質)の治療と、血液が固まらないような薬を飲みます。脳血栓症では少量のアスピリン(商品名:バファリン81、バイアスピリンなど)、脳塞栓症ではワーファリンが使われます。このワーファリンという薬は納豆やクロレラを食べると効果がなくなりますので、納豆やクロレラを食べないように注意が必要です。時々バファリンを内服中の方が納豆を食べるといけないとテレビで見たが大丈夫かと言われることがありますが、これはバファリンとワーファリンの聞き間違いです。バファリンを内服中の方は納豆などを食べても構いません。またこのワーファリンに代わる薬の最近発売されました。これは納豆を食べてもいいです。
脳梗塞の診断はMRIやCTで出来ますが、さらに血管の状況を見る為に脳血管撮影が必要です。脳血管撮影にもカテーテルを動脈に入れて造影剤を流す場合と、MRIやCTを使って行う場合があります。頚部超音波は簡単に首の動脈の状態を知ることが出来ます。心臓の病気があれば、心エコーをして、心臓の中の血栓の有無と心臓自体の病気を調べます。脳塞栓症では発症から数時間以内ならば血栓溶解剤を脳の動脈に直接流し、血栓を解かすような治療をする事もあります。
さて脳梗塞を起こしやすい方には高血圧、高脂血症、糖尿病、不整脈、肥満などの体質と、喫煙(タバコ)等の嗜好やストレスなどの環境があります。これらを脳梗塞の危険因子と呼びます。脳梗塞を予防する為にはこの危険因子を少しでも減らすように努めなければなりません。
脳梗塞を起こして1年くらいするともう大丈夫だろうと気持ちが湧いて来て、ここで治療を中断し、そして脳梗塞を再発する方がおられます。2度目は症状がひどくなりますので、脳梗塞を一度起こした方は再発を起こさないように一生が治療という気持ちで内服治療を続ける必要があります。気長にいきましょう。
当院では脳梗塞の急性期治療は行っておりません。それは平成17年にTPAと言う画期的な薬が使用開始され、発症から治療開始まで3時間以内と基準ができたからです。当院ではTPA治療が出来ません。当院で診察・検査などの時間を費やし、治療の出来る病院に辿り着く事が遅れると行けないので、当院の患者さんでも積極的に紹介しています。急性期治療の後は私がまた主治医として治療に当たりますが、リハビリが必要な場合はしばらくリハビリの出来る病院に入院となります。

脳出血

脳出血

脳出血とは、脳の中の細い血管(動脈)が切れて、大脳・小脳・脳幹の脳の実質内に出血してしまう病気で、「脳内出血」や「脳内血腫」とも呼ばれます。脳出血が起こると、血腫により周りの脳が圧迫されて、「意識障害」、「運動麻痺」、「感覚障害」、などの症状が発症し、脳の機能が低下します。また、血腫が大きくなると脳がむくむ脳浮腫により頭蓋骨の中の圧力が高くなって脳へのダメージがさらに大きくなり脳ヘルニアを起こし、最悪の場合は死亡してしまいます。脳出血が起こる脳の場所は、高血圧が原因の場合は脳の深い部分が多いです。高血圧以外の原因の場合は、脳の表面の部分に起こることが多いです。以前は、脳卒中といえば脳出血というぐらい、脳卒中の中ではいちばん患者数が多かったのですが、現在では脳梗塞の方が多くなっています。

脳出血のいちばんの原因は「高血圧」です。高血圧により起こる脳出血を「高血圧性脳出血」といいます。高血圧により起こる脳出血の割合は、脳出血全体の70%を占めます。高血圧を長い間そのままにしておくと、脳の細い動脈に異常が起こります。高血圧以外では、脳動脈奇形やアミロイド血管症などがあります。また血液をサラサラにする薬により起こることもありますし、まれに脳腫瘍や白血病などで起こる事もあります。
脳出血は前兆・前触れはなく、突然発症することが多いです。症状は脳梗塞と同じで、症状だけでは区別がつきません。小さい出血では頭痛もしません。CTスキャンですぐに診断がつきます。
治療は血圧の管理と脳浮腫の管理です。血腫が小さい場合はこれだけで後はリハビリテーションになります。血腫が大きい場合は救命の為や機能予後改善のために手術をする事がありますが、血腫の部位や大きさで手術のやり方が異なります(詳細は省きます)。血腫が大きい場合は救命出来ない事もあります。後遺症に対してはリハビリテーションが中心です。

くも膜下出血

くも膜下出血

くも膜下出血は頭の中の大きな動脈が突然破裂し出血を起こす病気で、その原因は脳動脈瘤が圧倒的に多いです。動脈瘤が破裂するまで症状のない事がほとんどです。
脳動脈瘤:70-80%、脳動静脈奇形:5-10%、その他:もやもや病など、原因不明:5%
脳血管壁の弱い部位に血液の流れや血圧などの負荷が加わると、動脈が風船のように膨らみ動脈瘤になります。多くの脳動脈瘤がくも膜下腔にあるため、これが破裂すると、くも膜下出血の原因となります。脳動脈瘤自体の自覚症状はほとんどありませんが、脳動脈瘤が大きくなって周囲の神経や脳を圧迫し瞼が下がる事がまれにあります。脳動脈瘤は体質や遺伝などの家族性が関係することが全体の20%を占めています。熊本県における脳動脈瘤治療の現状についての調査では、年齢は50歳から増え60歳、70歳代でピークになります。性別では男性32%に対して女性68%と女性に多いのが特徴です。日本では人口10万人当たり1年に20〜30人、欧米人は6〜10人です。

くも膜下出血は発症時の自覚症状に特徴があります。

  1. ①「バット」で殴られたような頭痛がある
  2. ②違和感・圧迫感・項頸部の張りがある
  3. ③嘔吐・下痢が重要といった全身症状がある
  4. ④発症の瞬間が特定でき、持続する、などです。

くも膜下出血は症状でかなり検討がつきますし、CTスキャンでほぼ診断がつきます。場合によっては脳脊髄液の検査を行うこともあります。動脈瘤の有無や大きさ、形状の診断のためには3D-CT、脳血管造影、MRA(MRIを用いた脳血管検査)を用います。
治療に関しては、脳動脈瘤が認められる場合、原則的にクリッピング術を行います。顕微鏡下の手術によって破れた動脈瘤の頸部をクリップして血流を止めます。またコイル塞栓術を用いる場合もあります。
熊本県脳卒中研究グループが共同で行った結果、くも膜下出血を起こした患者さんの転帰は、社会復帰41%、軽い後遺症12%、重い後遺症11%、死亡36%でした。患者さんのおよそ半数が死亡もしくは寝たきりになるという怖い病気です。
動脈瘤が破裂する原因としてはストレスや高血圧、喫煙・飲酒などが関与しています。
日本脳卒中学会など5学会合同による「脳卒中治療ガイドライン2009」では、破裂のリスクは喫煙習慣1.9倍、高血圧保有2.8倍、過度の飲酒(週150g 以上)4.7倍、喫煙+過度の飲酒6倍、喫煙+高血圧10.5倍となっており、喫煙と飲酒が複合するとリスクが一層高くなります。
脳動脈瘤が各種検査で見つかった場合、患者さんと相談の上、大きさが0.5cm〜1cm以上の場合にはクリッピング術やコイル塞栓術を行うか、そのまま何もせずに経過観察するかを決めます。日本脳ドック学会の治療ガイドラインでは、脳動脈瘤の最大径が5mm以上、年齢70歳以下、その他の条件が治療を妨げない場合、手術を勧めます。最大径が3〜4mm、70歳以上の場合、大きさ・形・部位・手術の危険性、患者の平均余命などを考慮して個別的に判断します。経過観察の場合、危険因子の排除しながら毎年検査するという基準を示しています。